学資保険の年末調整の書き方は?控除の手続きや必要書類・満期の場合の申告方法も解説
将来の子どもの教育費に備えて、学資保険に加入している人は多いでしょう。
年末調整では、保険料控除などの所得控除を受けて節税することが一般的です。
会社員や公務員など、会社や団体に所属して給与所得を得ている人は、毎月の給与から予定納税額が源泉徴収されています。
この源泉徴収税と所得税の差額を精算する手続きが、年末調整です。
年末調整では、個人や家族の事情を考慮した所得控除を受けることができます。
将来の生活保障に関わる保険料も対象となり、申請することで一定額の控除を受けることができるのです。
では、学資保険は税金控除の対象になるのでしょうか?
この記事では、学資保険の年末調整の書き方や手続き方法、控除額の上限や実際にいくら税金が戻ってくるのかなどについて詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
学資保険で確定申告は必要か
学資保険金を受け取ると、所得税や贈与税などがかかる場合があります。
受け取った保険金は所得にあたるため、税金が発生する場合には確定申告が必要です。
また、年間に支払った保険料の総額に応じた生命保険料控除についても確認しましょう。
学資保険の生命保険料控除の申請方法は、サラリーマンと自営業者で異なります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
- サラリーマン
サラリーマンは年末調整で生命保険料控除を申請できるので、確定申告は不要です。
9月~10月頃に保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」の内容をもとに、「サラリーマン保険料控除申告書」に必要事項を記入し、会社に提出します。
年間給与所得が2,000万円を超える場合や、年末調整に生命保険料控除を申請していない場合、また保険金を受け取ったときには確定申告が必要になります。
- 自営業者
自営業者は受け取った保険金に対する所得税もしくは贈与税の申告、また生命保険料控除を受けるために確定申告をする必要があります。
控除を受ける際には、確定申告書の生命保険料控除の欄に金額を記入し、「生命保険料控除証明書」または電磁的に記録された印刷物を添付します。
または、確定申告書を提出する際に窓口の担当者に提示してください。
参考記事:生命保険料控除|国税庁
学資保険の年末調整の書き方
学資保険に関する年末調整書類を書く場合、学資保険は「一般生命保険料控除」に該当します。
必要な情報は以下の通りです。
- 保険会社名
- 保険の種類等
- 保険期間
- 契約者氏名
- 保険金受取人
- 新旧制度の区分
- 1月から12月までに支払った保険料の合計額
これらは保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書でも確認することができます。
控除のための手続き方法
生命保険料控除を受けるには、会社員や公務員は年末調整、自営業者は確定申告が必要です。
ここでは、年末調整と確定申告に必要な手続きについて解説します。
- 会社員や公務員は年末調整で申請
会社員や公務員の場合は、勤務先で年末調整の手続きをすることで生命保険料控除を受けることができます。
年末調整の時期になると、勤務先から「給与所得者保険料控除申告書」が渡されるので、保険会社名や保険料の合計額などの必要事項を記入します。
また、毎年10月から11月にかけて、保険会社から「生命保険料控除証明書(保険料支払証明書)」などのハガキが送られてきますので、保険料控除申告書と一緒に勤務先に提出してください。
年末調整で控除手続きができない場合は、自分で確定申告をすることで生命保険料控除を受けることができます。
- 自営業者・フリーランスの方は確定申告で申請
自営業者・フリーランスの方は、年末調整が不要です。
生命保険料控除を受けるためには、確定申告で申請をする必要があります。
確定申告書の第一表の「生命保険料控除 ⑮」、第二表の「新生命保険料」または「旧生命保険料」の欄に、支払った保険料の額を記入してください。
確定申告書には生命保険料控除証明書(保険料払込証明書)を添付する必要があります。
参考記事:確定申告書|国税庁
控除のために必要な書類
年末調整を受けるには、以下の書類を用意する必要があります。
<会社員・公務員>
- 生命保険料控除証明書(保険料支払証明書)
保険料を支払ったことを証明する書類で、「年末調整」や「確定申告」で生命保険料控除を受ける際に添付書類として提出します。
毎年10月から11月頃に保険会社から郵送されてきます。
- 給与所得者の保険料控除申告書
保険料控除申告書(給与所得者用保険料控除申告書)は、会社員が年末調整の際に提出しなければならない書類です。
生命保険料、地震保険料、社会保険料など、従業員が支払った各種保険料を年末調整で申告する際に必要となります。
<自営業・フリーランス等>
- 生命保険料控除証明書(保険料支払証明書)
- 確定申告書
確定申告書は国税庁ホームページにある「確定申告書等作成コーナー」で用意することができます。
書類に不備があると控除が受けられませんので、ご注意ください。
参考記事:生命保険料控除|国税庁
控除申告を書く場所
「給与所得者の保険料控除申告書」の「社会保険料控除」欄に、以下の内容を記入してください。
①社会保険の種類
健康保険、国民健康保険、厚生年金保険、国民年金、介護保険、後期高齢者医療保険などの社会保険の種類を記入する欄です。
加入している保険を記入してください。
②保険料支払先名義
保険料を支払った機関・法人名を記入する欄です。
③保険料を負担する人の氏名と続柄
本人名義と同居親族名義で保険料を支払った場合は、その親族名と続柄を記入してください。
④今年支払った保険料の額
今年支払った保険料の合計額を記入する欄です。
その年の1月から12月までに本人が支払った社会保険料の額を確認し、記入してください。
給与から控除された社会保険料の金額は記入する必要はありません。
⑤合計(控除額)
今年支払った保険料の額をもとにした控除額の合計額を記入します。
最高120,000円まで控除することが可能です。
参考記事:給与所得者の保険料控除申告書|国税庁
参考記事:生命保険料控除|国税庁
学資保険の控除額はどのくらいになる?
学資保険の控除額は、年間に支払った保険料の総額によって決まります。
所得税と住民税の控除額は、以下をご確認ください。
- 所得税の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料全額 |
20,000円超40,000円以下 | 支払った保険料等の額×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 支払った保険料等の額×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
- 住民税の控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
12,000円以下 | 支払保険料全額 |
12,000円超32,000円以下 | 支払った保険料等の額×1/2+6,000円 |
32,000円超56,000円以下 | 支払った保険料等の額× 1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
学資保険に加入した場合、控除枠の上限は所得税で40,000円、住民税で28,000円であることがわかります。
学資保険の場合、多くの家庭では月々10,000~15,000円程度、年間で120,000~180,000円程度の保険料を支払っているため、所得税・住民税ともに控除上限内に収まるケースが多いはずです。
ただし、所得税控除額が40,000円、住民税控除額が28,000円だからといって、この金額が戻ってくるわけではありません。
実際に戻ってくるのは控除額分の税金の金額です。
また、戻ってくる金額は、契約者の年収や配偶者が専業主婦かどうかによっても異なります。
参考記事:生命保険料控除|国税庁
生命保険料控除の計算方法
生命保険料控除を受けるためには、保険に加入した時期によって「新制度」と「旧制度」のどちらに当てはまるのかを先に確認する必要があります。
新制度と旧制度の主な違いは何でしょうか?
2011年12月31日までに加入した保険に適用される旧制度では、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の2種類の控除がありました。
2012年1月1日以降に加入した保険が対象の新制度では、新たに介護医療保険料控除が導入され、控除上限額が引き上げられました。
新制度で介護医療保険料控除の対象となる保険商品は、旧制度では一般生命保険料控除の対象となっています。
個人年金保険料控除の対象となる保険商品は、新旧制度で同じです。
特に注意すべき点として、控除限度額や計算式が新旧制度で若干異なります。
生命保険契約がそもそも生命保険料控除の対象となるのか、新制度・旧制度のどちらに該当するのかは、毎年10月頃に生命保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」の内容で確認できます。
新制度の場合
新制度の対象となる一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料を年間120,000円支払った場合を考えてみましょう。
年間支払った保険料が80,000円を超えると、所得税においては一律40,000円が所得から控除されます。
したがって、一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険の控除額はそれぞれ40,000円となり、控除額の合計は120,000円となります。
所得税における生命保険料控除の限度額は合計120,000円ですので、上記のケースでは控除額は最大120,000円となります。
【所得税における生命保険料控除】
新制度:一般・介護・個人年金共通
年間の支払保険料 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料全額 |
20,000円超40,000円以下 | 支払保険料×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 支払保険料×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
【住民税における生命保険料控除】
新制度:一般・介護・個人年金共通
年間の支払保険料 | 控除額 |
12,000円以下 | 支払保険料全額 |
12,000円超32,000円以下 | 支払保険料×1/2+6,000円 |
32,000円超56,000円以下 | 支払保険料×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
旧制度の場合
旧制度が適用される一般生命保険と個人年金保険の保険料を年間120,000円支払った場合を考えてみましょう。
年間に支払った保険料が100,000円を超える場合、所得税においては一律50,000円が所得から控除されます。
一般生命保険と個人年金保険でそれぞれ50,000円控除できるので、控除額は合計100,000円です。
生命保険料控除の総額の上限に達していないため、10万円全額控除できます。
【所得税における生命保険料控除】
旧制度:一般・個人年金共通
年間の支払保険料 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料全額 |
25,000円超50,000円以下 | 支払保険料×1/2+12,500円 |
50,000円超100,000円以下 | 支払保険料×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
【住民税における生命保険料控除】
旧制度:一般・個人年金共通
年間の支払保険料 | 控除額 |
15,000円以下 | 支払保険料全額 |
15,000円超40,000円以下 | 支払保険料×1/2+7,500円 |
32,000円超40,000円~70,000円 | 支払保険料×1/4+17,500円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
参考記事:生命保険料控除|国税庁
学資保険は年末調整でいくら戻るのか
生命保険料控除を申請することで、どのくらい税金が戻ってくるのか、所得税と住民税に分けて解説します。
- 控除額が全額戻ってくるわけではない
生命保険料控除は所得控除のひとつで、所得控除で減額された所得に対して税金がかかります。
戻ってくる金額は、生命保険料控除による所得控除額に税率を掛けて算出します。
戻ってくる金額=所得控除額×税率
生命保険料控除による所得控除額が全額戻ってくるわけではありません。
- 所得税はいくら戻ってくるのか?
所得税は、「生命保険料控除による所得控除額×所得税率」で算出した金額が戻ってきます。
例えば、課税所得が300万円で生命保険料控除による所得控除額が上限の120,000円の場合、所得税率は10%なので、12,000円(120,000円×10%)が戻ってきます。
- 住民税はいくら戻ってくるか?
住民税も考え方は同じです。
「生命保険料控除による所得控除額×住民税率」で計算した金額が戻ってきます。
例えば、課税所得が300万円で生命保険料控除が上限の70,000円の場合、住民税率は基本的に10%なので、7,000円(70,000円×10%)が戻ってきます。
- 翌年の住民税が減額される
所得税は年末調整や確定申告をすることで還付を受けることができますが、住民税は還付されません。
住民税は、年末調整や確定申告の内容が翌年の住民税に反映され、減額・徴収される仕組みです。
参考記事:給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合|国税庁
年末調整で生命保険料控除の申請ができなかったときには、確定申告で申請することができます。
学資保険の確定申告の控除と申請方法については、次の記事でご紹介しています。
関連記事:学資保険金は確定申告で控除を受けられる?申請方法やいくら戻るのかも解説
学資保険の満期金は収入になるの?
学資保険の満期金(満期保険金)は所得になるため、収入として扱われます。
そのため、所得税、住民税、贈与税、相続税がかかります。
どの税金がかかるかは、保険料を支払う人(保険契約者)と保険金を受け取る人が同一人物か、異なる人物かによって異なります。
学資保険の保険料を支払う人と保険金を受け取る人が同一人物の場合、所得税と住民税がかかります。
学資保険の場合、契約時に保険契約者と受取人が同一人物であることが一般的です。
そのため、学資保険の満期保険金を受け取る際に所得税がかかるケースが多くあります。
保険契約者と受取人が異なる場合は、受取人の収入となり、贈与税がかかります。
例えば、保険契約者が父親で、受取人が子どもであるケースです。
所得税よりも贈与税が高額となることも、保険契約者と受取人を同一人物とすることが多い理由といえます。
相続税は、払込期間に契約者に万が一のことがあって保険料の支払いが免除になった保険の保険金を受け取った場合に課税されます。
参考記事:生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき|国税庁
満期金で確定申告がなぜ必要となるのかは、次の記事を参考にしてください。
関連記事:学資保険の満期で税金の確定申告が必要になる?具体例や申告不要の場合も解説
学資保険が満期の場合の確定申告の書き方
保険契約者と保険金の受取人が同一人物の場合、「一時所得」になり、所得税がかかります。
まず、第二表に記入していきます。
〈総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項(⑪)〉
- 所得種類 :「一時」
- 収入金額 :満期保険金の金額
- 必要経費等:払込保険料の総額
- 差額 :満期保険金の金額−払込保険料の総額
〈所得の内訳〉
- 所得の種類 :「一時」
- 種目 :「学資保険」
- 給与などの支払者の「名称」 及び「法人番号又は所在地」等:保険会社名、所在地
- 収入金額 :満期保険金の金額
- 源泉徴収税額:0円
一時所得の金額は、満期保険金の金額と払込保険料の総額の差額から特別控除額50万円を差し引いた金額で、マイナスになる場合は一時所得は0円となるため確定申告は不要です。
一時所得は、第一表の「収入金額等」の一番下にある「一時(サ)」に記入しましょう。
なお、保険金を年金形式で数回に分けて受け取る場合には「雑所得」になります。
保険契約者と保険金の受取人が異なる場合には、贈与税がかかります。
贈与税の金額は、受け取った満期保険金と基礎控除110万円の差額に税率を掛け、さらに所定の控除額を差し引くことで求められます。
申告には「贈与税の申告書」を使用します。
参考記事:贈与税の申告書の書きかた
控除申請で注意したいポイント
学資保険の生命保険料控除を受ける際には、注意したいポイントがいくつかあります。
まず、生命保険料控除を受けられるのは、保険料を支払った人です。
もし契約者と保険料を支払う人が異なる場合は、契約者ではなく保険料を支払った人が生命保険料控除を受けられます。
この場合、必ず支払った本人が控除の申請をする必要があります。
保険会社に代行で申請をしてもらうこともできませんので、本人が忘れずに申請をしましょう。
また、支払った保険料の全額が控除できるわけではない点にも注意が必要です。
どんなに高額の保険料を支払っていたとしても、控除できるのは最高40,000円となっています。
保険に加入してが5年未満の場合や、保険金の受取人が第三者である場合などには控除の対象外となることがあるため、事前に確認が必要です。
学資保険が妻名義の場合は?
学資保険の契約者を夫婦のどちらにするか検討する場合、収入が高い方を選ぶのが一般的です。
理由のひとつは、多くの学資保険の商品に、契約者に万が一のことあった際に支払いが免除される特約がついているからです。
支払いに関しても、学資保険の保険料は契約者名義の口座から引き落とされるため、夫よりも妻の収入が高いのであれば、妻名義にしておいた方が安心です。
また、学資保険の契約者を妻にすると保険料が安くなり、返戻率も高くなります。
学資保険には死亡保障がついているので、平均寿命が長い女性の方が保険料が安く設定されているのです。
特に、夫よりも健康であったり、年齢が若い妻であれば死亡リスクが低くなり、その分保険料が安く、返戻率が高くなります。
参考記事:生命保険料控除|国税庁
学資保険で確定申告しなかったらどうなる?
生存給付金やお祝い金といったボーナスのある学資保険は、その都度受取人である契約者の一時金所得として総合課税の対象となります。
通常は、それまでに支払った保険料の総額が受け取るボーナスより多いため課税は発生しません。
ただし、保険料の支払いが免除される契約などでは、一時金所得に課税が発生する場合があり、この場合は確定申告が必要となります。
確定申告しないと、無申告加算税や延滞税が追徴課税されます。
学資保険の保険金を受け取った年には、忘れずに確定申告をするようにしましょう。
参考記事:確定申告を忘れたとき|国税庁
まとめ
この記事では、年末調整で学資保険を控除する方法や書類の書き方、控除額の上限、実際にいくら税金が戻ってくるのかなどについて詳しく解説しました。
学資保険で生命保険料控除を活用すれば、所得税や住民税の負担を軽減することができます。
控除額は年間に支払った保険料の額によって決まり、所得税・住民税ともに控除額に上限があります。
控除を確実に受けるためにも、保険会社から生命保険料控除証明書が届いたら、必ず年末調整時に申請をするようにしましょう。