終身保険の解約はもったいない?損をしない解約返戻金の受け取りタイミングも詳しく解説
終身保険は貯蓄性があるため、解約した場合、解約返戻金を受け取ることができます。
また、終身保険は投資性商品としての側面があるため、解約するタイミングによって受け取る金額が変わってきます。
「終身保険を解約して、資金調達したい」と考えている方がいるのではないでしょうか。
その際、「終身保険を解約したら、もったいないのではないか」と考える方もいることでしょう。
今回は、終身保険の解約はもったいないのかを明らかにするため、損をしない解約返戻金の受け取りタイミングなどについて詳しく解説します。
終身保険解約はもったいない?
終身保険の解約は、必ずしももったいないとはいえません。
経済的な状況により終身保険を解約せざるを得ないことがあるほか、解約するタイミングによって、もったいないといえるかどうかは変わってくるからです。
終身保険とは、文字どおり一生涯にわたって死亡や高度障害状態に陥った際の保険金が保障される生命保険のことです。
終身保険を解約した場合、解約返戻金が保険会社から支払われますが、契約から解約までの期間が短ければ短いほど解約返戻金は少なくなります。
そのため、解約返戻金がこれまで支払った保険料(払込保険料総額)を下回ることから、元本割れしてしまいます。
終身保険の解約がもったいないかどうかを判断するには、解約返戻金以外にも保険料や税金、保険の変更などを考慮する必要があります。
終身保険を解約するメリット
終身保険の解約にはメリット・デメリットがあります。
まず、終身保険を解約する主なメリットとして、次の2つがあります。
- 保険料の支払いがなくなる
- 解約返戻金が受け取れる
2つのメリットについて詳しく解説していきます。
保険料の支払いがなくなる
終身保険を解約するメリットとして、保険料の支払いがなくなることが挙げられます。
終身保険を解約したら、毎月の保険料を支払う必要がなくなるからです。
1人あたりの毎月の平均保険料は、1.49万円であることから、保険料の支払いがなくなれば、その分家計に余裕が生まれます。
参考記事:2022年度 生活保障に関する調査|公益財団法人生命保険文化センター
ただし、保険料の支払いがなくなる代わりに死亡や高度障害、医療特約などの保障がなくなるため、新たな保険に加入するなどの対策が必要です。
解約返戻金が受け取れる
解約返戻金が受け取れるのも、終身保険を解約するメリットです。
終身保険は貯蓄性のある保険商品であるため、解約した場合、解約返戻金が受け取れます。
生活費などの資金が必要になった場合、終身保険の解約は有効です。
一般的に解約返戻金は、解約までの加入期間が短ければ短いほど少なくなり、加入期間が長ければ長いほど多くなります。
保険料の払込満了後には、払込保険料総額を解約返戻金が上回ることが多いです。
そのため、終身保険は投資性の高い保険商品だといえます。
終身保険の解約時に解約返戻金をどのくらいもらえるかを表す指標として、解約返戻率があり、次のような計算式で求められます。
解約返戻率 = 解約返戻金 ÷ 払込保険料総額 × 100
つまり、これまで払い込んだ保険料(払込保険料総額)に対する解約返戻金の割合のことです。
解約返戻率が100%を超えた場合、解約返戻金が払込保険料総額を上回ったことを意味します。
終身保険を解約するデメリット
終身保険を解約するデメリットとして、次の5つが挙げられます。
- 解約返戻金に税金がかかる
- 元本割れする可能性がある
- 保障がなくなる
- 健康状態によって再加入できない場合がある
- 再加入の場合に保険料が高くなる
メリットよりもデメリットのほうが多くなっているため、終身保険を解約する際は、メリットとデメリットを比較した上で、慎重に判断する必要があります。
解約返戻金に税金がかかる
終身保険を解約するデメリットとして、解約返戻金に税金がかかることが挙げられます。
解約返戻金が払込保険料総額を上回った場合の利益は所得になるため、所得税がかかるからです。
解約返戻金は一時所得に該当し、計算式は次のようになります。
一時所得金額 =
収入金額(解約返戻金)- 払込保険料総額 - 特別控除額(最高50万円)÷ 2
この計算式を見てもらえばわかるように、解約返戻金と払込保険料総額の差が50万円を超える場合は税金がかかりますが、50万円以下の場合には税金がかかりません。
終身保険を解約すると税金はどのくらいかかる?
終身保険を解約する場合、解約返戻金、払込保険料総額が次のようなとき、税金はどのくらいかかるのか計算します。
- 解約返戻金:560万円
- 払込保険料総額:500万円
一時所得金額 =
{収入金額(解約返戻金)- 払込保険料総額 - 特別控除額(最高50万円)}÷ 2
{560万円 - 500万円 - 50万円} ÷ 2 = 5万円
この結果、このケースにおいて終身保険を解約した場合の税金は、5万円です。
元本割れする可能性がある
既に触れましたが、終身保険を解約すると解約返戻金が受け取れます。
しかし、保険料の払込期間中に終身保険を解約した場合、解約返戻金はこれまで払い込んだ保険料(払込保険料総額)を下回る可能性が高いです。
このように解約返戻金が、払込保険料総額を下回ることを元本割れといいます。
元本割れする可能性があることも、終身保険を解約するデメリットのひとつです。
「元本割れ」は投資で使われる用語で、投資した資金(元本)が価格変動により少なくなることを指します。
終身保険も金融商品の一種ですから、解約返戻金が投資した資金(払込保険料総額)よりも下回る場合、元本割れというのです。
一方、保険料の払込期間終了後は、解約返戻金は増加する傾向にあるため、払込保険料総額を上回る可能性が高くなります。
そのため、解約返戻金は、加入期間が短ければ少なくなり、長いほど多くなるのです。
保障がなくなる
保障がなくなることも、終身保険を解約するデメリットになります。
終身保険を解約すると、死亡・高度障害保障などの主契約だけでなく、医療保障や収入保障、三大疾病保障などの特約もなくなってしまうからです。
終身保険を解約しても保険の代わりになる十分な貯蓄があれば問題ありませんが、十分な貯蓄がない場合、保障がない状態になってしまいます。
その場合、新たな保険に加入するなどの対策を講じる必要があります。
そうしないと、いざというときの病気やケガに備えることができなくなってしまうからです。
健康状態によって再加入できない場合がある
終身保険を解約するデメリットとして、健康状態によって再加入できない場合があることが挙げられます。
現在の終身保険に加入後に、病気が発症した場合、終身保険に再加入できない場合があるからです。
そのため、このケースでは、終身保険を解約しないほうがいいです。
終身保険の加入後に病気が発症したとしても、終身保険に影響はありません。
解約してしまうと本当にもったいないので、終身保険を解約するかどうかは慎重に検討すべきです。
再加入の場合に保険料が高くなる
再加入の場合に保険料が高くなるのも、終身保険を解約するデメリットのひとつです。
終身保険に限らず、一般的に生命保険の保険料は、年齢を重ねれば重ねるほど高くなります。
つまり、終身保険を解約して再加入する場合は、当然年齢を重ねているため、保険料は高くなるのです。
終身保険を解約する場合、解約後に再加入するつもりであるならば、保険料を安く済ませるためにも解約しないほうが賢明でしょう。
終身保険解約前に検討したい4つのこと
終身保険を解約する前に検討したいことが4つあります。
- 保険料の減額
- 払済保険への変更
- 延長保険への切り替え
- 契約者貸付制度の利用
ここからは終身保険解約前に検討したいことについて解説していきます。
保険料の減額
終身保険を解約する前に検討したいこととして、保険料の減額が挙げられます。
というのは、保険料を支払う余裕がなくなったという理由で、終身保険を解約する人が多いからです。
保険料を支払う余裕がなくなったのであれば、保険料を減額することで、この問題は解決できます。
さらに、保険料を減額すれば、終身保険を解約することなく、死亡・高度障害などの際の保障を継続することも可能です。
なお、生命保険を解約した主な理由を挙げると次のとおりです。
生命保険を解約した主な理由
解約・失効の理由 | 割合 |
他の生命保険に切り替えたので | 34.6% |
掛金を支払う余裕がなくなったから | 23.0% |
掛金が更新により高くなってしまったから | 12.8% |
義理で入ったものなので | 11.9% |
まとまったお金が必要となって | 9.9% |
参考記事:2021年度 生命保険に関する全国実態調査|公益財団法人生命保険文化センター
払済保険への変更
払済保険に変更することも、終身保険を解約する前に検討したいことのひとつです。
払済保険に変更することによって、支払う余裕がなくなった保険料の負担を軽減することが可能だからです。
払済保険とは、残りの保険料に解約返戻金を充てることにより、今後の保険料の払込みを不要にする方法です。
保険金額は減少し保障は一生涯続きますが、特約が消滅するため、注意が必要です。
保障が一生涯続くのは、保険期間が変わらないからです。
ただし、解約返戻金が少ない場合は、払済保険に変更できないことがあります。
延長保険への切り替え
延長保険に切り替えることも、終身保険を解約する前に検討したいことです。
延長保険に切り替えることにより、保険料の負担を軽減できるからです。
延長保険も払済保険と同じく、残りの保険料に解約返戻金を充てることにより、今後の保険料の払込みを不要にする方法です。
保険金額は変更せずに、保険期間を短くして定期保険に変更するのが、延長保険です。
保険期間を短くするとは、一生涯の保障ではなくなるということです。
払済保険と延長保険の比較
保険料 | 保険金額 | 保険期間 | |
払済保険 | 中止 | 減少 | 変更なし(一生涯) |
延長保険 | 中止 | 変更なし | 短縮 |
契約者貸付制度の利用
終身保険を解約する前に検討したいこととして、契約者貸付制度の利用が挙げられます。
契約者貸付制度とは、保険契約者が解約返戻金の範囲内で保険会社から貸付を受けられる制度です。
そのため、終身保険を解約しなくても、資金を調達することができます。
銀行からの貸付などと同じく、保険会社が定めた利息がつきますが、借り入れる際に審査はありません。
借入金を返済していない場合は、解約返戻金から貸付金の元本と利子が差し引かれます。
終身保険の弱点とは
終身保険の弱点として、定期保険よりも保険料が高いことが挙げられます。
終身保険が解約返戻金を受け取れる貯蓄性のある保険であるのに対し、定期保険は掛け捨てだからです。
保険料が高い以外にも、終身保険には弱点があるので解説します。
終身保険の払込満了後はどうなる?
終身保険の払込満了後、主契約である終身保険の保障は一生涯続きますが、医療保障や収入保障、三大疾病保障などの特約は、払込満了と同時に終了します。
つまり、終身保険は払込満了後も保障が続きますが、特約は払込満了とともに保障がなくなるということです。
ただし、保険料を支払うことで特約を継続することもできます。
支払方法については、保険会社の多くが前納(一括払いまたは分割払い)か年払いとしています。
一般的に、60歳や65歳で払込満了として契約していることから、その年齢で特約も終了します。
特約を継続したい場合は、保険料を支払えば、80歳もしくは一生涯にわたって特約の保障が得られます。
しかし、特約を継続する場合、前納・年払いなどまとまったお金が必要になるため、特約を継続するかどうかは慎重に判断しなければなりません。
終身保険を解約するのに良いタイミングは?
終身保険を解約する場合、良いタイミングとはどのようなときでしょうか。
良いタイミングとして、次のケースがあります。
- まとまった資金が必要になったとき
- 資産全体の見直しをするとき
- より最適な保険が出てきたとき
それぞれのタイミングについて詳しく解説していきます。
まとまった資金が必要になったとき
終身保険を解約するタイミングとして、まとまった資金が必要になったときが挙げられます。
終身保険を解約すると、解約返戻金が受け取れるからです。
まとまった資金が必要になったとき、解約することで資金調達できることが、終身保険の大きなメリットです。
しかし、終身保険を解約すると、死亡・高度障害保障などがなくなってしまうため、なくなる保障の代わりを考えておかなければなりません。
また、解約返戻金は、払込期間が短ければ短いほど少なく、長ければ長いほど多くなります。
特に払込満了後に、解約返戻金は増加する傾向にあるため、終身保険の解約を検討する際は、保険会社に解約返戻金の動向を確認しましょう。
解約返戻金の動向を踏まえて、終身保険を解約するかどうかの判断をすることをおすすめします。
資産全体の見直しをするとき
資産全体の見直しをするときも、終身保険を解約するタイミングとして最適です。
人生において、結婚、出産などのイベントがあったら、終身保険を含めた保険の見直しを検討したほうがいいからです。
例えば、家族が増えたら、その分保障を厚くしたほうが安心です。
ただし、保障を厚くする際は必要最低限の保障があれば十分なので、毎月の保険料の支払いが大変になるほど高額な保険は必要ありません。
より最適な保険が出てきたとき
現在より自分にとってプラスになる終身保険に乗り換えたほうが、役に立つ場合があります。
より最適な保険が出てきたときも、終身保険を解約するタイミングとして適切です。
ただ、別の終身保険に乗り換えるときは、FP(ファイナンシャル・プランナー)に相談するなど元の保険と比較検討した上で慎重に判断してください。
また、保障の空白期間をつくらないようにするため、乗り換えた終身保険の保障が始まってから元の保険を解約するようにしましょう。
空白期間とは無保障期間のことで、元の保険と乗り換える保険契約の間が空いてしまったときに生じる期間のことです。
空白期間に万が一のことがあったら、後悔することになるため、空白期間はつくらないようにしましょう。
損をしない解約返戻金の受け取りタイミング
損をしない解約返戻金の受け取りのタイミングは、解約返戻金が払込保険料総額を上回ったときです。
終身保険において、解約返戻金が払込保険料総額を上回るのは、保険料の払込満了後です。
つまり、60歳、65歳以降になるため、若い方にとってはまだまだ先の話ですね。
では、そこまで待たなくてはいけないのでしょうか。
いいえ、そんなことはありません。
もし、生活する上で資金が必要になったら、終身保険を解約して解約返戻金を受け取るのもひとつの選択肢です。
ただし、この場合、解約返戻金は払込保険料総額を下回ってしまいます。
また、終身保険を解約したら、保障がなくなるので、他の保険に乗り換えるなどの代替手段を考えておく必要があります。
まとめ
今回は、終身保険の解約はもったいないのかを明らかにするため、損をしない解約返戻金の受け取りタイミングなどについて、詳しく解説しました。
終身保険の解約は、解約するタイミングによって、必ずしももったいないとはいえません。
より最適な保険が出てきたときはその保険に乗り換えたほうがお得な場合があったり、損をせずに解約返戻金が受け取れるタイミングもあります。
また、毎月の保険料を支払う余裕がなくなった場合、終身保険の解約以外に、保険料の減額、払済保険や延長保険への切り替え、契約者貸付制度の利用などの選択肢があることもご紹介しました。
終身保険の解約について考える際には、参考にしてご検討ください。