就業不能状態の例は?働けなくなる確率や原因・支払いまでの待機期間についても解説

病気やケガで働けなくなったときの生活費をカバーするために、就業不能保険に加入する方は年々増えています。
しかし、給付条件である「就業不能状態」とは、具体的にどんな状態を指しているのかを把握している方は少ないのではないでしょうか。
就業不能状態の具体例を知ることで、保障を見直す機会になり「もしも」のときの経済的な不安が解消されます。
そこで本記事では、就業不能状態の具体例や働けなくなる確率や原因・支払いまでの期間についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。


就業不能状態の例はどんなものがあるのか
就業不能保険では、ケガや病気で働けない「就業不能状態」とみなされた場合に、保険会社から給付を受けることができます。
保険会社によって「就業不能状態」の定義は異なるものの、以下のいずれかの状態である場合は、給付対象といえます。
- 入院している状態
- 在宅療養している状態
- 障害等級1級もしくは2級に認定された状態
- 特定障害状態
それぞれ詳しく解説します。
入院している状態
就業不能状態として、まず挙げられるのが「入院している状態」です。
就業不能保険に適用とされる「入院している状態」とは、病気やケガの治療を目的として日本国内の病院または診療所に入院している状態を指します。
ただし、精神疾患を原因とする場合の入院は、就業不能状態と認められない可能性があるため、事前に確認する必要があります。
在宅療養している状態
次に、在宅療養している状態も就業不能保険に適用されますが、医師の指示で自宅療養しただけでは給付が受けられない可能性があります。
在宅療養とは、通院が困難な場合に医師の指示により定期的な「訪問診療」を受けながら自宅等で治療に専念することを定義とします。
このため、公的医療制度による医科診療報酬点数表の「在宅患者診療・指導料(往診料および救急搬送診療を除く)に列挙されている診療料や管理指導料等」が算定されている場合が対象です。
上記の算定がされているか否かは、医療機関で医療費を支払った際に、領収書と一緒に受け取れる「診療明細書」で確認することができます。
なお、保険会社によって対象とする状態が異なるため、加入中の給付条件をいま一度確認してみてください。
障害等級1級もしくは2級に認定された状態
入院や在宅療養をしていなくても、障害等級1級もしくは2級に認定された状態であれば、就業不能状態とみなされます。
【障害等級1級】
- 両眼の視力がそれぞれ0.03以下である
- 両耳の聴力が100デシベル以上である
- 両上肢または両下肢の機能に著しい障がいを有する
- 体幹機能の障がいを有する(座っていること、立ち上がることができない程度)など
【障害等級2級】
- 両眼の視力がそれぞれ0.07以下である
- 両耳の聴力が90デシベル以上である
- 一上肢または一下肢の機能に著しい障がいを有する
- 体幹機能の障がいを有する(歩くことができない程度)など
上記は一例ですが、所定の状態で障害等級の認定を受けている場合は、就業不能状態とみなされます。
参考:障害等級表|日本年金機構
特定障害状態
特定障害状態とは、視力障害や聴力障害・精神障害などにより、日常生活が著しい制限を受ける場合や日常生活に著しい制限を加えることが必要な場合を指します。
加入している保険商品の内容によって「所定の障害状態」は異なりますが、高度障害保険金の給付の受け取りが可能であり、保険料の払込も不要になるケースが一般的です。
就業不能保険の請求には診断書が必要?

就業不能保険で給付金を請求するには、診断書が必要です。
保険金や給付金を請求する場合、まずは保険会社に連絡して状況の説明をおこないましょう。
その後、契約内容などの確認ができ次第、保険会社から請求に必要な書類が送付されてきます。
必要書類の内容を保険会社が慎重に精査し、保険の適用が認められた場合に保険金や給付金
が支払われるという仕組みです。
就業不能保険の請求に必要な書類とは
就業不能保険の請求に必要な書類は、保険会社や保険商品・就業不能状態によっても変わります。
一般的には、保険会社から送付される「就業不能状況証明書」に担当医が記入することで、医師の診断書として扱われるケースが多いです。
また、契約内容によっては休職開始直前12ヵ月分の給与明細などの所得証明書や、事故状況報告書などを提出する場合もあります。
なお、障害等級に該当する場合には、年金証書や精神障害者保健福祉手帳のコピーも同封します。
保険会社から送付される就業不能状況証明書について詳しく知りたい方は、下記の記事もおすすめです。
関連記事:就業不能状況証明書とは?労務不能証明書との違いやどこでもらえるのかもまるっと解説!
就業不能保険を請求する際には、担当者にしっかりと確認するようにしてください。


就業不能保険の条件は厳しいのか
就業不能保険では、給付金の支払条件が厳しいという意見もあります。
上記で解説しましたように、保険会社が「就業不能な状態」と認めた場合は保険金の給付を受けることができます。
しかし、支払い対象外になる疾患もあります。
妊娠や出産などは代表的な例であり、ほとんどの保険会社が給付の対象外としています。
自然分娩か異常分娩かの違いによっては、対象になる可能性もありますが、給付金の支払条件については事前にしっかりと確認することが重要です。
就業不能保険はうつ病などの精神疾患も対象になる?
就業不能保険の場合、うつ病などの精神疾患は保障されない商品が多いです。
精神疾患の特性上、症状の完治の判断が難しく再発の可能性も高いとされています。
不公平が生じてしまう懸念点から、対象から外している保険会社も多いのです。
就業不能保険はうつ病などの精神疾患も対象になるのかどうかについては、下記の記事もおすすめです。
関連記事:就業不能保険は精神疾患も対象になる?うつ病や適応障害の方も利用できる公的保障制度も紹介
就業不能の待機期間(免責期間)とは
就業不能保険は「就業不能状態」と認められる場合であっても、すぐに給付を受けられない待期期間(免責期間)があります。
一般的には60日〜180日の待期期間(免責期間)の保険商品が多いですが、14日や30日といった短い期間の商品も選べます。
待期期間(免責期間)に迷う場合は、「傷病手当金」の給付期間(最長1年6ヵ月間)を基準に決めるとよいでしょう。
ただし、自営業やフリーランスとして働く方は「傷病手当金」の給付が受けられないため、すぐに収入が途絶える可能性が高いです。
そのため、待期期間(免責期間)がなるべく短い商品をおすすめしますが、保険料が高くなる可能性があるため注意が必要です。

また、待期期間(免責期間)を経て給付が開始された場合でも、「いつまで給付が受けられるか」は、保険商品によって異なります。
保険期間の満了まで給付を受けられる商品もあれば、ケガや病気から回復した時点で給付がストップしてしまう商品もあります。
就業不能状態から回復したとしても、以前と同じように働けるわけではないため、復職後でも給付を継続できる商品がおすすめです。
働けなくなる確率とは

全国健康保険協会の「傷病手当金の支給状況」のデータから、現役世代の方の働けなくなる確率をみていきます。
まず、傷病手当金とは、会社員や公務員が加入する健康保険の制度で、病気やケガの療養で休業した場合に、給与の3分の2程度の給付金が受け取れるものです。
「傷病手当金の支給状況」のデータによれば、働き盛りの20代後半〜50代までの傷病手当金の平均支給率は「10.4%」という結果が出ています。
つまり、現在の現役世代とされる人たちの「約10人に1人」は、働けなくなる可能性があるということです。
なお、同じデータから傷病別の支給状態を見てみると、「精神および行動の障害」に該当する割合が男性・女性ともに最も高いことがわかりました。
参考:【令和5年度】現金給付受給者状況調査報告|全国健康保険協会
就業不能の原因ランキング
20歳から65歳までの男女800名を対象に、チューリッヒ生命が実施した「病気やケガで10日以上働けなくなった人への実態調査」のデータから、下記の就業不能原因ランキングを作成しました。
順位 | 就業不能の割合 |
---|---|
1位 | うつ病や統合失調症など精神の疾患 22.6% |
2位 | 交通事故以外の事故(転落など)によるケガ 18% |
3位 | 交通事故によるケガ 15.3% |
4位 | 新生物(がん) 6.9% |
5位 | 急性心筋梗塞など脳血管疾患以外の循環器疾患 4.8% |
6位 | 脳梗塞や高次脳機能障害などの脳血管疾患 2.8% |
就業不能の原因ランキングは上記のとおりですが、就業不能状態になった年代を見てみると「20代」が38%と最も多く、次いで「30代」が23%、「40代」が17%と続いています。
このことから、働き盛りの年代のなかでも比較的若い世代の人のほうが、働けなくなるリスクが高いことがわかるでしょう。
また、就業不能の原因として最も多かった「うつ病など精神の疾患」は、休業した人の約半数が「社会復帰までに6ヵ月以上かかった」と回答しており、長期化しやすい傾向のようです。
参考:病気やケガで10日以上働けなくなった人への実態調査 | チューリッヒ生命
精神疾患を保障対象外にしている保険会社も多いことから、契約中の保険商品が「うつ病などの精神疾患」も対象なのかどうか、確認してみてはいかがでしょうか。


まとめ
今回は「就業不能状態」の具体例や働けなくなる確率・原因などを解説しました。
「就業不能状態」の一般的な定義には、「入院状態」「在宅療養」などが挙げられますが、保険会社や保険商品によって異なります。
また、就業不能状態で療養した場合でも、保険金や給付金が支払われるまでには「免責期間」がある点には注意が必要です。
働き盛りの人の「約10人に1人」が働けなくなるというデータも出ていますので、就業不能保険を検討中の人・加入中の人も、いま一度保障内容を十分に確認してみてください。