就業不能保険とは?加入率や条件の厳しさ・審査に落ちた場合の対処法も徹底解説!
「もし、病気やケガで働けなくなったら、家族はどうなってしまうだろう」と考えたことがある方もいるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスが流行したときのことを思い返すと、本当に不安になる人も多いのではないかと思います。
しかし、もしものために備えた生命保険で、死亡保険には加入しているが、就業不能保険には加入していない人も多いことでしょう。
死亡保険はご自身が亡くなったときに保険金が遺族に支給されますが、病気やケガで働けなくなったときには支給されません。
支給されるのは、公的保障や医療保険になりますが、それだけでは大幅に減ってしまう収入の埋め合わせとなるか不安があります。
そんなときに必要な生活費をカバーしてくれるのが、就業不能保険です。
今回は就業不能保険とは何かを解説するとともに、加入率や条件の厳しさ、審査に落ちた場合の対処法を徹底解説します。
就業不能保険とは
就業不能保険とは、病気やケガによって働けなくなり収入が減少した場合、公的保障だけでは補いきれない部分を保障する保険です。
ここでいう公的保障とは、障害年金や傷病手当金などのことですが、自営業者(個人事業主、フリーランス)には傷病手当金という制度はありません。
そのため、就業不能保険は、会社員や公務員だけでなく自営業者にも有用な保障です。
万が一のときに障害年金や傷病手当金だけでは、それまでの収入を考えると不足してしまうため、カバーするために就業不能保険が適しています。
さらに住宅ローンや子どもの教育費を抱えている場合、収入が減少すると、それらの支払いができなくなってしまうおそれもあります。
そこで、必要な資金を確保するために役立つのが就業不能保険です。
就業不能保険は、働けなくなった際の収入減少をカバーする役割を果たします。
就業不能保険の内容を詳しく知るためには、次の点が重要です。
- 就業不能とはどんな状態?
- どんなときに就業不能保険の対象になるのか?
それぞれについて、解説します。
就業不能とはどんな状態?
就業不能保険は、働けなくなった際の収入減少をカバーする保険です。
では、就業不能とはどんな状態でしょうか。
就業不能保険にはいくつかの保険商品があり、「就業不能状態」の定義は保険商品ごとに異なっています。
一般的な「就業不能状態」の定義には、次の3つがあります。
- 病気やケガを治療するための長期間の入院
- 治療するため、医師の指示による在宅療養
- 障害等級1級・2級のいずれかに該当
精神疾患が「就業不能状態」に該当するかどうかは、保険商品により異なるため、確認が必要です。
そのため、就業不能保険に加入する際には、複数の保険商品の就業不能状態を比較検討することをおすすめします。
どんなときに就業不能保険の対象になるのか?
就業不能保険の対象になるのは、病気やケガで働けなくなったとき、つまり「就業不能状態」の3つの定義に該当した場合です。
また、病気やケガで保険金が支給される保険に医療保険があります。
では、就業不能保険と医療保険は、どんなときに対象になるのでしょうか。
就業不能保険は、病気やケガで働けなくなり就業不能状態に該当したときに保障対象になり、60日、180日などの支払対象外期間(免責期間※)が設けられていることがあります。
一方、医療保険は、病気やケガで治療のため入院したとき、60日などの上限が決められています。
この場合、医療保険の入院日数の60日が過ぎたとしても、61日目からは就業不能保険により対応できるため、医療保険と就業不能保険の両方に加入しておけば、保障が重なることはありません。
<注釈>
※就業不能状態になった理由や保険会社によっては免責期間がないものもあります。
就業不能保険と収入保障保険の違い
言葉の意味がよく似ているため、就業不能保険との違いがわかりにくい保険に「収入保障保険」があります。
就業不能保険と収入保障保険の最も大きな違いは、死亡保障があるかどうかです。
就業不能保険は、病気やケガで働けなくなった場合の収入減少をカバーします。
一方、収入保障保険は、被保険者が死亡または高度障害状態になった場合に死亡保険金によって遺族の生活費をカバーする保険です。
就業不能保険と所得補償保険の違い
就業不能保険とよく似ている保険には、収入保障保険だけでなく「所得補償保険」も挙げられます。
就業不能保険と所得補償保険の最も大きな違いは、取り扱っている保険会社です。
就業不能保険は生命保険会社が取り扱っているのに対し、所得補償保険は損害保険会社が取り扱っています。
病気やケガで働けなくなった場合に保険金が支払われるのは、就業不能保険も所得補償保険も同じです。
ただし、保険期間や免責期間が違っており、就業不能保険は長く、所得補償保険は短くなっています。
就業不能保険、収入保障保険、所得補償保険を比較してまとめた表は、次のとおりです。
就業不能保険 | 収入保障保険 | 所得補償保険 | |
死亡保障 | なし | あり | なし |
保険金の受取人 | 被保険者 | 遺族 | 被保険者 |
保険会社 | 生命保険会社 | 生命保険会社 | 損害保険会社 |
保険期間 | 長い | 長い | 短い |
免責期間 | 長い(60日、180日) | なし | 短い(7日間など) |
就業不能保険のメリット
就業不能保険の主なメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 公的保障では足りない生活費をカバーできる
- 医療保険の足りない保障をカバーできる
- 働けなくなった際の金銭的不安を和らげることが可能
それぞれのメリットを解説します。
公的保障では足りない生活費をカバーできる
就業不能保険のメリットとして、公的保障では足りない生活費をカバーできることが挙げられます。
会社員や公務員が病気やケガで働けなくなったとき、公的保障として支給される障害年金や傷病手当金では、生活費に足りないおそれがあるからです。
しかし、就業不能保険に加入していれば、公的保障では足りない生活費をカバーできます。
一方で、自営業者(個人事業主、フリーランス)には傷病手当金の制度がないため、会社員や公務員よりも就業不能保険の必要性が高いといえます。
医療保険の足りない保障をカバーできる
医療保険の保障だけでは足りない部分をカバーできるのも、就業不能保険のメリットのひとつです。
医療保険は入院や手術を対象としているものの、入院後の在宅療養などは対象になっていないからです。
このように就業不能保険は、公的保障だけでなく民間の医療保険の足りない保障もカバーできます。
ただ、精神疾患が就業不能保険の対象になるかは保険商品によって異なるため、気になる方は保険商品を比較検討してから加入するようにしましょう。
働けなくなった際の金銭的不安を和らげることが可能
病気やケガで働けなくなったとき、医療費がどのくらいかかるのか、家族で生活できるだけの貯金はあるのかと不安になることも多くなるでしょう。
就業不能保険に加入しておくことで、そんな金銭的不安を和らげることが可能になります。
生命保険などの死亡保険に加入しておけば、自分にもしものことがあっても安心だと思いがちです。
ですが働けなくなった場合も必要な保障がないと、自分はもちろん、家族も大きな不安を抱えることになるかもしれません。
その点、就業不能保険に加入しておけば安心できるので、金銭的不安を和らげることが可能になります。
就業不能保険のデメリット
就業不能保険のデメリットとして、次の2つが挙げられます。
- 免責期間(支払対象外期間)がある
- 精神疾患が対象にならない保険商品がある
それぞれのデメリットを解説します。
免責期間(支払対象外期間)がある
就業不能保険には、免責期間(支払対象外期間)があるというデメリットがあります。
免責期間とは、保険金の支払いの対象とならない期間(給付を受けるまでの支払対象外期間)のことです。
一般的に就業不能保険の免責期間は、60日または180日のいずれかになります。
つまり、免責期間中は、就業不能保険の保障は始まらないということです。
例えば、働けない状態になったとして、免責期間中の180日の間に仕事ができるようになった場合には保険金は支給されません。
そのため、免責期間は長いよりも短いほうが保険料は高くなります。
<注釈>
※就業不能状態になった理由や保険会社によっては免責期間がないものもあります。
精神疾患が対象にならない保険商品がある
精神疾患が対象にならない保険商品があることも、就業不能保険のデメリットのひとつです。
精神疾患を有する患者数が増加傾向にあるため、誰にでも将来精神疾患を発症することにより働けなくなる可能性があるからです。
そのため、精神疾患が対象になる保険商品かどうかを見極めて選ぶことをおすすめします。
就業不能保険の加入率
就業不能保険の加入率は、「2021年度 生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)で確認できます。
この調査によると、生活障害・就業不能保障保険、生活障害・就業不能保障特約の加入率(世帯ベース)は18.4%です。
また、2022年度「生活保障に関する調査」(生命保険文化センター)によると、生活障害・就業不能保障保険、生活障害・就業不能保障特約の加入率(個人)は5.3%となっています。
年齢別に見ると、最も高いのは40歳代の9.8%です。
同調査の生命保険加入率が、79.8%となっているので、この数字と比べると、就業不能保険の加入率はかなり低くなっています。
参考記事:2021年度 生命保険に関する全国実態調査│公益財団法人生命保険文化センター
参考記事:2022年度 生活保障に関する調査│公益財団法人生命保険文化センター
就業不能保険がいらないと言われる理由
就業不能保険はいらないと言う人もいるようですが、どのような理由からなのでしょうか。
それは、病気やケガのため働けなくなったとしても、公的保障として障害年金や傷病手当金が支給されるからです。
例えば、傷病手当金は1年6ヵ月間、給料の3分の2程度が支給されます。
しかし、住宅ローンや教育費などの支払いがある場合、3分の1程度の給料が減ると、それらの支払いが難しくなることは大いに考えられます。
そこで、必要になるのが就業不能保険です。
実際に働けなくなってから「収入が足りない」と焦っても、すぐに資金調達できるものではありません。
安心して生活していくためにも、就業不能保険がおすすめです。
「就業不能保険はいらない」と言われることについては、こちらの記事でも詳しく説明しているので、参考にしてください。
関連記事:就業不能保険は会社員や公務員はいらない?必要性が高い人や加入条件・告知内容も紹介
就業不能保険の加入率は、生命保険の加入率より低くなっていますが、病気やケガをした際に減少した収入の不足を補うのに役に立つため、おすすめします。
就業不能保険の条件は厳しいのか
就業不能保険は、支払条件が厳しいと言われています。
それは、次のような条件があるからです。
- 支払対象外期間(免責期間)がある
- 3つの定義がある
就業不能保険では、60日、180日のいずれかの支払対象外期間(免責期間)中は保障が始まらず、支払対象外期間の経過後に保障が始まる保険商品が多くあります。
また、一般的に就業不能保険には、次のように3つの定義があります。
- 病気やケガを治療するため長期間の入院
- 治療するため、医師の指示による在宅療養
- 障害等級1級・2級のいずれかに該当
さらに、精神疾患が対象になるかどうかは、保険商品によって違っているため、確認が必要です。
このような条件があるため、就業不能保険の支払条件は厳しいと言われているようです。
就業不能保険の審査に落ちた場合の対処法
就業不能保険の審査に落ちた場合の対処法として、次の3つがあります。
- 公的保障を利用する
- 所得補償保険を利用する
- FP(ファイナンシャル・プランナー)などの専門家に相談する
それぞれについて、解説します。
公的保障を利用する
公的保障とは、傷病手当金や障害年金のことです。
傷病手当金は、病気やケガをした場合にもらえる給付金で、1年6ヵ月の間、給料の3分の2程度が支給されます。
ただし、会社員や公務員向けの制度であり、自営業者(個人事業主、フリーランス)に傷病手当金は支給されません。
障害年金は、病気やケガにより障害が残った場合に支給される年金です。
障害年金は会社員や公務員だけでなく、自営業者も対象になりますが、障害等級1級・2級のいずれかに該当しなければ支給されません。
障害等級1級・2級のいずれかに該当しなければならないという条件は、就業不能保険の定義のひとつです。
しかし、そもそも就業不能保険は公的保障をカバーするための保険なので、正確には対処法とはいえません。
所得補償保険を利用する
就業不能保険の審査に落ちた場合の対処法として、所得補償保険を利用することが挙げられます。
所得補償保険は、就業不能保険と同じく病気やケガで働けなくなった場合に保険金が支払われる保険です。
異なる点として、就業不能保険は生命保険会社が取り扱うのに対し、所得補償保険は損害保険会社が取り扱っている商品です。
また、保険期間や免責期間に違いがあり、所得補償保険よりも就業不能保険のほうが保険期間、免責期間が長くなっています。
FP(ファイナンシャル・プランナー)などの専門家に相談する
FP(ファイナンシャル・プランナー)などの専門家に相談するのも、就業不能保険の審査に落ちた場合の対処法のひとつです。
ただし、就業不能保険の審査に落ちた場合にFPに相談したとしても、必ずしも審査に通るとは限りません。
その場合でも、就業不能保険以外の方法など適した方法を提案してもらえます。
働けなくなったときにもらえる公的保障はある?
働けなくなったときにもらえる公的保障として、次の2つがあります。
- 障害年金
- 傷病手当金
それぞれの公的保障を解説します。
障害年金
障害年金は、働けなくなったときにもらえる公的保障のひとつです。
障害年金は、病気やケガにより障害が残った場合に支給されます。
障害年金は会社員や公務員だけでなく、自営業者も対象になりますが、障害等級1級・2級のいずれかに該当しなければ、就業不能保険は支給されません。
傷病手当金
働けなくなったときにもらえる公的保障として、傷病手当金があります。
傷病手当金は病気やケガをした場合にもらえる給付金で、1年6ヵ月の間、給料の3分の2程度が支給されます。
ただし、会社員や公務員向けの制度であり、自営業者に傷病手当金はありません。
就業不能保険は会社員には必要ない?
結論から言うと、就業不能保険は会社員には必要ないとはいえません。
就業不能保険が必要であるかどうかは、会社員個人の状況によって違ってくるからです。
ここからは、就業不能保険の必要性が高い人についてご紹介します。
当てはまるかどうかを確認の上、本当に自分には必要ないのか、専門家に相談してみてください。
就業不能保険の必要性が高い人とは
就業不能保険の必要性が高い人として、次のような人が挙げられます。
- 自営業者(個人事業主、フリーランス)
- 貯蓄が十分にない人
それぞれについて、解説します。
自営業者(個人事業主、フリーランス)
就業不能保険の必要性が高い人として、自営業者(個人事業主、フリーランス)が挙げられます。
会社員や公務員のように、病気やケガをしたときにもらえる傷病手当金の制度がないからです。
障害年金は自営業者ももらえますが、障害年金だけでは生活費をカバーするのは難しいかもしれません。
ただし、自営業者であっても貯蓄が十分にあれば、就業不能保険は必要ありません。
貯蓄が十分にない人
貯蓄が十分にない人も、就業不能保険の必要性が高い人といえます。
会社員や公務員でも、給料でギリギリの生活を送っている人だと、障害年金や傷病手当金だけでは生活費がカバーできないからです。
例えば、傷病手当金は、1年6ヵ月の間、給料の3分の2程度しかもらえません。
住宅ローンや教育費などの支払いがある場合、貯蓄が十分にないとカバーできないため、貯蓄が十分にない人は就業不能保険の必要性が高いといえます。
就業不能保険を選ぶ際のポイント
就業不能保険を選ぶ際のポイントとして、次の4つが挙げられます。
- 受けられる公的保障の確認
- 働けなくなった場合に必要な金額の確認
- 給付金の支払条件や加入条件の確認
- 必要保障額・保険期間・受け取り方法を決定
それぞれについて、解説します。
受けられる公的保障の確認
就業不能保険を選ぶ際の重要な点として、受けられる公的保障の確認が挙げられます。
就業不能保険がどのくらい必要かを計算するには、どのくらいの公的保障(障害年金、傷病手当金)が受けられるかを確認する必要があるからです。
なお、障害年金が受けられる場合は、傷病手当金は支給されないので注意が必要です。
働けなくなった場合に必要な金額の確認
働けなくなった場合に必要な金額を確認することも、ポイントのひとつです。
働けなくなった場合に必要な金額を確認することで、公的保障(障害年金、傷病手当金)に加えて、どのくらいの就業不能保険があれば、生活費をカバーできるかがわかるからです。
病気やケガで働けなくなった場合、給付金は①障害年金、②傷病手当金、③就業不能保険の順に決まるため、働けなくなった場合に必要な金額が決まれば、どのくらいの就業不能保険が必要なのかがわかります。
給付金の支払い条件や加入条件の確認
給付金の支払条件や加入条件を確認することも、就業不能保険を選ぶ際には必要です。
就業不能保険は「就業不能状態」になったときに給付金が支給されますが、給付金の支払条件や加入条件は、保険商品によって異なっているからです。
なかでも重要なのは、精神疾患が就業不能保険の対象になっているかどうかでしょう。
この点は、就業不能保険を選ぶにあたって特に注意してください。
必要保障額・保険期間・受け取り方法を決定
必要保障額・保険期間・受け取り方法を決めることも、就業不能保険を選ぶ際のポイントです。
就業不能保険に加入する際の状況によって、必要保障額・保険期間・受け取り方法が変わってくるからです。
就業不能保険の必要保障額は、先ほど解説した「受けられる公的保障」「働けなくなった場合に必要な金額」がわかれば算出できます。
保険期間は「55・60・65・70歳まで」のように保険会社によって違っているため、いつまで保障が必要かを考えたうえで申し込みましょう。
難しくてわかりにくいという方は、FPに相談してみてください。
受け取り方法には、一般的に「満額タイプ」と「ハーフタイプ」があります。
満額タイプは、支払対象外期間後から満額が支払われ、ハーフタイプは満額の50%の給付金が支払われます。
まとめ
今回は、就業不能保険とは何かを解説するとともに、加入率や条件の厳しさ、審査に落ちた場合の対処法を徹底解説しました。
就業不能保険とは、病気やケガで働けなくなった場合に、障害年金や傷病手当金などの公的保障に加えて生活費をカバーする保険です。
そのため、将来の金銭的不安を軽減できるので、安心感を手に入れることが可能です。
就業不能保険は、病気やケガで働けなくなった場合に、現在の給料が少しでも減ったら困るという方におすすめです。