就業不能保険と遺族補償一時金の違いは?労災の療養補償給付や休業補償給付についても解説!

普段元気に仕事しているときでも、突然の病気やけがなどで働けなくなることはあります。
長期間働けなくなった際の備えとして、就業不能保険や労災保険の遺族補償一時金などがあります。
しかし、就業不能保険と遺族補償一時金の違いがよくわからない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、就業不能保険と遺族補償一時金の違いを、労災保険の療養補償給付や休業補償給付などとともに徹底解説します。


就業不能保険とは
ご自身や一家の大黒柱であるパートナーの方に何かあって、収入が激減した場合への備えをしておきたい方もいるかと思います。
就業不能保険とは、そんな収入減少に備えられる保険の一種です。
具体的には、被保険者が病気やけがが原因で長期的に働けなくなった際に、給付金を受け取れます。
会社員や公務員にとっては、職場で加入する健康保険の傷病手当金と併用できるため、収入が減る金額を極力抑えられます。
個人事業主・フリーランスにとっても、会社員などと異なり傷病手当金がない分、働けなくなって収入が途絶えた際の助けとなる存在です。
就業不能保険の特徴やメリット・デメリットについて、より詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:就業不能保険とは?加入率や条件の厳しさ・審査に落ちた場合の対処法も徹底解説!
遺族補償一時金とは
働けなくなった際の収入減少に備えられる手段に、遺族補償一時金もあります。
遺族補償一時金とは、労災保険(労働者災害補償保険)で用意されている保障内容のひとつです。
加入している企業の労働者が業務中の事故などで亡くなった際、遺族補償年金を受け取る資格を持つ方がいない場合、一定範囲のご遺族に支給されます。
また、遺族補償年金を受け取っていた方が受給開始から1,000日経たないうちに亡くなり、受け取れる資格のある方がいなくなった場合も支給される仕組みです。
なお受け取れる金額は、1日当たりの支給金額(給付基礎日額1,000日分)からすでに支給された金額を差し引いた分です。
参考:労災保険 遺族(補償等)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続|厚生労働省
遺族補償年金と一時金の違いは?
労災保険で支給される給付金には、遺族補償一時金以外に遺族補償年金があります。
遺族補償年金とは、加入している企業の労働者が亡くなった際、その方の収入で養われていたご家族に支給される給付金です。
残されるご家族のうち、配偶者・子・父母・祖父母・兄弟姉妹に受給資格があります。
同時に受給資格は、この順番で優先順位が決まるのも特徴です。
ただし妻以外の方については、年少または高齢であるか、一定程度以上の障がいを抱えていることも条件になります。
なお、一時金は以上の受給資格者がいない場合に支給される点が、遺族補償年金と異なります。
加えて遺族補償年金の支給額は、受給資格者の人数によって変動します。
- 遺族1名の場合:給付基礎日額153日分(55歳以上の妻か、一定程度以上の障がいがある妻は175日分)
- 遺族2名の場合:給付基礎日額201日分
- 遺族3名の場合:給付基礎日額223日分
- 遺族4名以上の場合:給付基礎日額245日分
参考:労災保険 遺族(補償等)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続|厚生労働省
遺族補償一時金の順位は?
遺族補償一時金の受給資格を持つ方は具体的には以下のとおりです。
そして、上から順に優先順位が決まっていて、このうち最も順位の高い方が受け取れます。
- 労働者の配偶者
- 労働者が養っていた子・父母・孫・祖父母
- その他の子・父母・孫・祖父母
- 労働者の兄弟姉妹
なお、子・父母・孫・祖父母のなかでは、子・父母から順に優先されるルールです。
また、同じ優先順位の方が2名以上いる際は、それぞれ受給資格が発生します。
就業不能保険と遺族補償一時金の違いは?
就業不能保険と遺族補償一時金の違いは、まず就業不能保険が生命保険会社が提供するものであるのに対し、遺族補償一時金は国の労災保険の保障の1つです。
また、支給の条件も異なります。
就業不能保険は被保険者が病気やけがで長い期間にわたって働けなくなった際に、遺族補償一時金は加入している労働者が亡くなった場合に支給されるのが特徴です。
さらに、遺族補償一時金は遺族補償年金の受給資格者がいないとき、他のご家族が受け取れます。
これに対して就業不能保険は、契約したご本人が受け取る仕組みです。
ほかにも、就業不能保険は遺族補償一時金と異なり、事前に毎月受け取れる金額を設定できます。


労働者災害補償保険の内容とは

遺族補償一時金を受け取れる労働者災害補償保険(労災保険)について、具体的な内容がわからない方も多いかと思います。
労働者災害補償保険とは、労働者を雇用している企業が加入する公的保険の一種です。
加入している企業で働く労働者が、仕事中や通勤中の事故や病気・けがで負傷・死亡した際、本人やご遺族に必要な給付がおこなわれます。
ちなみにここでいう「労働者」は正社員に限定されないため、加入している企業の従業員は、雇用形態に関係なく全員が保障を受けられるのが特徴です。
なお、労災保険は1人でも労働者を雇用している企業は、加入を義務付けられています。
そして、労災保険の保険料は、全額を企業が負担する決まりです。
ちなみに、個人事業主のように企業に雇われていない人は、基本的に加入対象とはみなされません。
ただし、一人親方や海外派遣者などのようなケースに当てはまる場合は、「特別加入制度」で入れます。
療養補償給付と休業補償給付との違いは?
労働者災害補償保険(労災保険)の保障内容は、療養補償給付や休業補償給付などとさまざまです。
療養補償給付とは、労災保険の保障で最も基本的なものです。
加入している労働者が、実際の業務中や通勤中に病気やけがに見舞われた際に、給付がおこなわれます。
具体的には、労災病院や労災指定病院での治療を無料で受けられるほか、それ以外の病院での治療費が支給される内容です。
一方の休業補償給付は、病気やけがが理由で働けない間の生活費などが支給されます。
会社員向けの健康保険でいう傷病手当金のような保障で、働けない期間中は給料の約8割の給付金を受け取れます。
参考:労災保険給付の内容|厚生労働省 福島労働局
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
療養補償給付と休業補償給付の併給は可能?
病気やけがが理由で治療や休業を余儀なくされたとき、療養補償給付と休業補償給付は併給できるか気になるのではないでしょうか。
実際に業務中や通勤中の病気やけがが原因であれば、療養補償給付と休業補償給付の併給は可能です。
療養補償給付は治療の提供、休業補償給付は休業中の生活の保障と、お互いに目的や用途が異なります。
このため、職場などでの病気やけがが理由で治療や休みが必要であれば、両方とも受け取れます。
自宅療養の場合も労災の補償を受けられる?
自宅療養の方でも、労災で補償を受けられるのか知っておきたい方もいるかと思います。
治療のために入った病院を退院後、引き続き自宅療養が必要な場合でも、労災の補償を受けられます。
労災保険の療養補償給付には、「自宅療養中や入院中の場合にかかる看護費」の項目もあるためです。
この自宅療養中の看護費は、治療費や薬代などとともに支給されることから、自宅療養をしていても補償給付を受けられます。
もし、一家の大黒柱である旦那様が病気やけがなどで働けなくなった際の備えを知りたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
関連記事:旦那が働けなくなったらどんな保険が役立つ?国からの給付金や補助金・できる備えも解説
就業不能保険と収入保障保険の違いは?
病気やけがで長期間働けなくなってしまった場合に備えて、就業不能保険を検討する方もいるのではないでしょうか。
ただ、就業不能保険とよく似たものに「収入保障保険」があるため、両者にどんな違いがあるのか気になるかと思います。
就業不能保険と収入保障保険の大きな違いが、「支給されるケース」です。
就業不能保険が病気やけがで長期間働けなくなった場合に備えられるのに対し、収入保障保険は一家の大黒柱が亡くなるなどした際、残されるご家族の生活を保障します。
つまり、就業不能保険では働いているご本人が生存していることが条件である一方、収入保障保険はご本人が死亡または高度機能障害になった際に支給されます。
このため、就業不能保険の給付金はご本人が、収入保障保険の保険金は残されるご家族が受け取る仕組みです。
また、2つの保険は給付金に税金がかかるかどうかも異なります。
就業不能保険の給付金はご本人が受け取るために非課税です。
しかし、収入保障保険の保険金は残されるご家族が受け取るため、相続税などが発生する場合があります。
就業不能保険のメリットとデメリット
就業不能保険のメリットは、次のとおりです。
- 公的保険ではカバーしきれない生活費の不足分を補える
- 在宅療養中の生活費もカバーできる
- 【個人事業主・フリーランスの場合】公的保障の薄さを補える
会社員や公務員が長期間病気やけがの療養を目的に休業すると、健康保険の傷病手当金が支給されます。
しかし、生活費や治療費などによっては、傷病手当金だけで足りないこともあります。
その際に就業不能保険があれば、傷病手当金とともに収入が減った分を補てんできます。
また、医療保険では対象外になりやすい在宅療養中の生活費を補える点も、就業不能保険の強みです。
ほかにも個人事業主・フリーランスについては公的保障が薄いため、就業不能保険があれば休業中の収入減少・無収入状態でも助かります。
一方で就業不能保険のデメリットは、以下のとおりです。
- 免責期間がある
- 精神疾患は保障対象外になるケースも
就業不能保険は、働けなくなった日から一定の免責期間(保障を受けられない期間)があります。
働けなくなってからすぐに給付金を受け取れないため、支給開始日までは傷病手当金や預貯金を活用するなど工夫が欠かせません。
また、精神疾患については支給対象外としている保険商品が多くある点にも、注意が必要です。
収入保障保険のメリットとデメリット
続いて、収入保障保険には次のメリットがあります。
- 残されたご家族が定期的に収入を得られる
- 保険料が安い
収入保障保険は、契約時に残されたご家族に毎月いくらを支給するか決められます。
このため、一家の大黒柱の方に万が一のことがあったときも、残されるご家族は決まった金額の収入で生活費を賄えます。
加えて、毎月入ってくる金額が決まっているため、計画的に活用できる点もポイントです。
また、収入保障保険は生命保険のなかでは保険料が安く設定されています。
収入保障保険は支払った保険料が保険金の元手にならない掛け捨て型であるうえに、毎月受け取る保険金が年月とともに減額されるためです。
一方、収入保障保険のデメリットは、次のとおりです。
- 解約返戻金がない
- 年月とともに毎月受け取れる保険金額が減っていく
収入保障保険は掛け捨て型の保険であるため、途中解約をした場合の解約返戻金はありません。
保険料を支払っている間に大きな出費が生じても、解約を通じてまとまったお金を受け取れない決まりです。
また、毎月受け取れる保険金額が年月とともに減っていくデメリットもあります。
これは、収入保障保険が子どもが成長した後に独立していく想定で設計されているためです。
収入保障保険と就業不能保険の違いをより細かく知りたい方は、以下の記事が参考になります。
関連記事:収入保障保険と就業不能保険の違いは?特徴と条件やメリット・デメリットも合わせて比較!
就業不能保険と収入保障保険はどっちがいい?

就業不能保険と収入保障保険を見比べて、どっちがいいのか判断できない方もいるのではないでしょうか。
実は就業不能保険と収入保障保険は、そもそも活用する目的が異なります。
このため、「どっちがいいのか」は利用目的に応じて判断すると良いでしょう。
就業不能保険は働いている被保険者が病気やけがで長期的に休む羽目になり、その際の収入減少に備えられます。
このため、被保険者が休んでいる間の生活費や、被保険者の治療費を確保するのにおすすめです。
一方で収入保障保険は、被保険者に万が一の場合があった際、残されるご家族が生活に困らないように準備できます。
なお、収入保障保険と同じく万が一の場合に備えられる保険に、定期保険もあります。
収入保障保険と定期保険を比較検討したい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
関連記事:生命保険は収入保障保険と定期保険のどっちを選ぶべき?必要な人や組み合わせられるのかも解説
就業不能保険と収入保障保険はセットにできる?
「就業不能保険と収入保障保険の比較が難しいなら、いっそセットにできないか」という考えもあるのではないでしょうか。
実は近年、就業不能保険と収入保障保険がセットになった保険商品も増えてきています。
2つの保険がセットになった保険商品では、収入保障保険を主契約に、就業不能保険の保障が特約として付いてくるパターンが多いです。
2つの保険がセットになっている場合、就業不能保険の保障については免責期間はありません。
支払い条件に当てはまれば、免責期間を経ることなくすぐに給付金を受け取れます。
ただし、通常の就業不能保険と収入保障保険をセットにしているため、支払うべき保険料が高くなる点に注意が必要です。
就業不能保険や収入保障保険に特約はある?
就業不能保険や収入保障保険に、何らかの特約があるのかが気になるのではないでしょうか。
まず、就業不能保険については、精神疾患の方向けの特約があります。
就業不能保険では、主契約で精神疾患の方は対象外になるケースも多いです。
しかし、精神疾患の方向けの特約を付ければ、たとえ精神疾患が原因で長期間働けなくなっても給付金を受け取れます。
また、収入保障保険の場合は「保険料払込免除特約」が付くケースが多いです。
この特約は、被保険者が保険会社が指定した「所定の状態」になった場合に、保険料の支払いを免除されます。
「所定の状態」の具体例として、高度機能障害や三大疾病(がん・脳卒中・心疾患)などが挙げられます。
もし、特約付きのものも含め就業不能保険や収入保障保険を探していて、なかなか保険商品を絞れない方は「ほけんプラネット」までご相談ください。


まとめ
就業不能保険は民間の生命保険会社が提供する、長期間働けなくなった場合に備えられる保険です。
これに対し、遺族補償一時金は労災保険で用意されている保障であり、労働者が亡くなった際に誰も遺族補償年金を受け取る方がいない場合に支給されます。
就業不能保険・労災保険ともに、仕事を休まざるを得ないときに給付金をもらったり、治療補償を受けたりできる保険です。
今は元気でも長期的に働けなくなるリスクはあるため、今からでも両方の違いや特徴を知っておくのがおすすめです。